大判例

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東京地方裁判所 昭和41年(刑わ)2852号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕本件公訴事実は、被告人らは、判示第一ないし第三の犯行に際し、いわゆる「見せ金」によつて株式の払込があつたように仮装し、かつ、商法所定の創立総会などの手続を経た旨の、内容虚偽の創立総会議事録などを作成し、株式会社が適法に設立されたもののように装い、その旨の不実の登記をしようと企て、共謀のうえ、前判示の如く「見せ金」を用いて株式払込金保管証明書を入手したほか、定款、創立総会議事録、取締役会議事録、株式申込証などの内容虚偽の書類を作成し、これらの書類を添付して、株式会社設立の登記申請をなし、よつて商業登記簿の原本に当該株式会社が商法所定の手続により適法に設立された旨不実の記載をさせたうえ、これを行使したとするのであつて、これを要するに公訴事実の記載によれば、判決第一ないし第三の各登記申請に際し、登記簿の原本に記載された当該登記事項の全てが虚偽であるとするものであると思料される。なるほど、判示各会社の設立は、いわゆる設立屋と称せられる被告人らの手によつてその手続が行なわれたことは明らかであり、その手続の形式的側面に関しては、単に文書の体裁を整えたものに過ぎず、適法な手続の段階を経ないものであることは勿論であるけれども、さればといつて、被告人らが、全く擅に架空の会社を作出したものということは到底できないのであつて、被告人らは、本件各会社の中心的人物である前記薬井秀男らの指示に従い、定款を作成し、株式引受人、取締役等を書面に記載したのであるが、これらに対応する発起人らの意思決定、株式引受、その他役員の選任などはことの実質に則して考えれば、現実に存在したと認められない訳ではないのである。勿論発起人中には、単に名義のみを貸すに留めたもの、或いはその意に反し発起人とされたものもない訳ではないが、前者については、とも角定款に記名押印をし、株式引受の意思を表明しているのであるから、これをことさらに発起人中から除外する積極的な理由に乏しく、後者については、これを発起人から除外してもなお設立無効の一原因となるに留まり、ひいて会社自体を不存在とならしめることはないと考えられる。従つて、株式会社の規範である定款、人的要素というべき株主、執行機関が全く欠缺したものということはできず、さらに各会社とも営業所を設け、当該商号を用い、取締役とされたもの、とくに、藤井、新井らを中心に、ともかく営業活動をしていたものと認められるのであるから公訴事実記載のようにその全ての登記事項を虚偽とする訳にはゆかないのであつて、結局各登記事項中、発行済株式の総数および取締役、監査役の氏名、代表取締役の住所、氏名の点について、虚偽記入の存否が究明さるべきこととなるが、役員の選任の点については、前記手続上の瑕疵にも拘らず、これを被告人らの認識に即して考えるときは、被告人らが前記経緯で、各役員の氏名等を申請したことからして、当時被告人らにこれが全くの虚偽のものであるとの認識があつたかについてはなお、疑いがない訳ではないのであるから、結局仮装払込の点についてのみ、本件犯罪が成立すると認めるのが相当であり、前判示のとおり認定した次第である。(上野敏 篠原曜彦 荒木勝己)

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